パパ・ブッシュとアメックス・プラチナカード 広報の時代
目次
パパ・ブッシュとブロッコリー
アメリカのブッシュファミリーは、親子で大統領を輩出した政治一家として有名です。
先日お父さんの、パパ・ブッシュ元大統領がなくなられたとき、テレビ番組で生前のブロッコリーに関するエピソードが放送されていました。
なんでもこどもの頃からパパ・ブッシュはブロッコリーが嫌いだったそうです。
それをなにかの機会に演説の中で触れたところ、アメリカのブロッコリー協会が、ホワイトハウスにブロッコリーを進呈したということでした。
その時思い出したのが、アメックスプラチナカードが、アメリカで発行され始めたときのエピソード。
日本では、ゴールドカードが、いまのプラチナカード以上のステータスを、持っていた時代の話です。
当時私は社員でしたが、まだ見たこともなく、社内でも伝説めいた、いまのブラック・センチュリオンカードのような位置づけでした。
パパ・ブッシュとアメックス・プラチナカード
やはりどこかの式典会場での出来事でした。
ある男の子が、パパ・ブッシュ大統領の隣りに座っています。
その男の子が、近くの大人に「隣りに座っているのは大統領だよ」と告げられて、
「おじさん本当に大統領なの?」とたずねます。
するとブッシュ大統領は、ポケットから、アメリカン・エキスプレスのプラチナカードを取り出して、男の子に見せます。
「ほら、ここに名前が書いてあるよ」と。
そしてプラチナカードにズームイン。
これがメディアで拡散されました。
パパ・ブッシュは大統領になる前、CIA長官を務めたことがあります。
CIA長官であっただけに、さすがにメディアの使い方が上手いと、感心したことを覚えています。
メディアの使い方
最近のところでは、ミッション・インポシブルで、トム・クルーズが乗るクルマやバイクがBMWであったり、歴代の007の愛車ボンドカーがジャガーであったり。
スポンサーとの関係性がはっきりとよくわかる、このようなタイアップはよくあります。見ている側も、それがわかっていても、良いものは良いと感じます。
しかし、より巧妙なのはタイアップではない、しかし結果的にPRとなる手法。その先駆けがブッシュ大統領のアメックスカードのチラ見せです。
さすが元CIA長官です。センスがあります。
広報
「広告」よりも「広報」の方が、対費用効果が高い、ということは昔から言われてきました。
「広告」は、企業が制作して、宣伝枠を購入して、掲載するのに対して、「広報」は、情報として、新聞や雑誌の記者やライターが書いた記事、によって拡散されます。
検索エンジンを使用するとき、たいていの人は、広告のリンクを避けて開きます。
でも、ブロガーの記事については、そのまま中を覗いていきます。
信頼性はさておき、情報の一つとして、宣伝とは考えず、構えず、素直に個人の意見や体験として、読まれる傾向があります。
ウェブという新しい媒体は、広報=パブリックリレーションを主体とする、新しいコミュニケーションチャネルとして、発展してきました。
SNSが普及すると、いわゆる口コミが、それに拍車をかけました。
アフィリエイトと広報
アフィリエイトは、広告と広報の間をすり抜ける、 微妙な立ち位置です。
新聞や雑誌の記者は、掲載される広告を意識することなく記事を書きます。広告の位置を記者が意識することはまずありません。
テレビの場合には、スポンサーが絶対です。番組制作者は常にスポンサーの意向を気にして番組を制作します。
アフィリエイトは広告です。
アフィリエイターは、広告リンクをクリックしてもらえるように記事を作成します。売るための文章なので、いわゆるコピーライティングです。
ブロガーはアフィリエイターと重なる部分は多いですが、いまのところ、まだその役割は、よく見えません。広告を意識して書く人もいれば、まったく意識せずに書く人もいるでしょう。
インフルエンサー
パパ・ブッシュは、元祖インフルエンサーと言えます。
インスタグラムのない時代にメディアを使って、さりげなくアメックスのPRに手を貸す。
アメリカ合衆国大統領ですから、最強のインフルエンサーです。
インスタグラムが企業に好まれるのも、美しい写真を、切り取り、貼り付けて、自然な形で拡散しやすいからでしょう。
余計な言葉を入れずに、自然な形で自社ブランドを、普段使いしている姿を、そのまま著名人が、自分の素直な気持ちとして伝えることは、広告に換算すると、相当のバリューに値します。
社内広報資料として、パパ・ブッシュがプラチナカードを男の子に見せるシーンを目にしてからはや二十数年。
マーケティングの世界はますます複雑になり、より洗練された企業の広報・コミュニケーションが必要とされる時代になっています。