アバターで仕事をするということ

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私には二人の上司がいる。

職務上の上司と組織上の上司だ。

職務上の上司はタイにいて、組織上の上司は東京にいる。

職務上とは、たとえば私は法務の仕事をしているため、法務に関することはタイにいる上司に報告する。

しかし、例えば、休暇を取ったり、日本の組織上のことで報告が必要な場合には、東京の上司に報告する。

私は入社時には、組織上の上司は東京にいるので、東京で面接をしたが、職務上の上司はタイにいるので会う事はせず、電話でインタビューを受けた。

これはテレワークが始まる以前の事で、Zoomなどが流行する以前のお話だ。なのでその時は、国際電話で話をした。

これは外資系ではよくある話で、以前他の外資系の会社の採用試験を受けたときにも同様のことがあった。

私はコロナが流行するまで上司の顔を見たことがなかった。

コロナが流行するようになって、Zoomが流行ったおかげで、顔を写して話すことが一般化されたのだが、Zoomはセキュリティー上の問題があると言うことで、私が働く企業では禁止されている。

幾度かお互いの顔を写しながら話すことがあったから、双方の顔を認識するようになったのだが、それまでは大抵音声のみのコミュニケーションだけだった。しかし、それで困ったと言うことは、今まで全くない。リアルでなくてはダメだといっているのはどこの誰だ、と思う。

WebExという会議用ツールを全世界のグループ企業で導入して使用しているため、プレゼン資料などはそのツールで共有できるので、顔が見えなくても特に困らない。

ウェブ会議と言うと日本ではやたらと顔を晒して行うことが一般的なようだが、回線状況があまりよくない国もあるので、無駄なパケットを費やして顔を晒しながら話すことはないと個人的には思う。顔を晒して話をしたからといって、何か特別にことが進むと言うことはない。

メールと電話だけでも相手の性格はわかってくるもので、APAC各国の担当者のやりとりを見ていると、その人が求められていることに、どのように対応するかは、大体予想できるようになる。

提出物の遅い人。すぐに動く人。言われても最後まで動かない人。性格はメールや会議の中でおおよそ見えてくる。

週に一回くらいはオフィスへ行くが、98%以上の業務はパソコン画面の中だけで完結している。

法務なので、契約書の内容を確認するために、その背景を説明してもらうことはあるが、特に目を見て話さないと困る、と言うことはない。

ただ、事前に信頼関係が醸成されていないと、そのコミュニケーションは難しくなる。

信頼関係が構築されていない人とは、会って話を聞いたところで信頼できないことには変わりはないので、時間の無駄に終わることも多い。

ヒトに肉体が備わっている以上、物理的な移動、肉体的な制約は常に存在する。

しかしながら、突き詰めていけば結局のところ私の仕事に関しては、脳とPCさえあれば完結できるようになっている。

困るのは、会社の法人印を押すことくらいで、これもやがて電子署名に変わっていくことだろう。

しかし、今のところ、多くの取引先の大企業がメディアを通じて受ける印象とは異なり、電子署名の導入には慎重なようだ。

なので私は明日もまたオフィスまで出かけることになる。