住宅価格は購入者がローンで支払える金額で決まる。見渡す限り銀行の所有する畑がひろがる東京。

毎月支払える金額で家の価格は決まる

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物の値段は、買いたい人が多く、売りたい人が少なければ高くなります。買いたい人が少なく、売りたい人が多ければ安くなります。

家の場合、全く同じ家というものは、一つとしてありません。

同じつくり、同じ材質、同じ区画のなかであったとしても、東西南北の向きで、その値段は大きく違います。

販売されている時期によっても違います。

物の値段は、原材料費の値段、労働者の賃金、家賃などの製造にかかる経費、それに利益などが積み重なって決まりますが、家の場合にはどうでしょう。

当たり前のことですが、わたしたちは、物には値段があって、それを買うためにはどうすればよいかと考えます。

しかし、家の場合には、ほとんどの人が住宅ローンを借りて購入するため、価格の決まり方が特殊です。

現金一括払いで購入する人がほとんどであれば、住宅ローンの金利動向などには影響を受けません。

しかし、ほとんどの場合、ローンで購入する人となりますので、購入者対象者が月額で支払える金額を想定した上で、家の値段が決まっていくことになります。

ローンの金利が変動要素

金利1%で3000万円を借りて、30年で返済すると、月額約9.5万円となります。これが金利2%となれば、約11.1万円。金利3%で約12.7万円となります。

金利が1%上昇すると、月々の支払いが15%前後増えます。

年利 30年返済 月額返済
1% 3000万円 約9.5万円
2% 3000万円 約11.1万円
3% 3000万円 約12.7万円

金利が3%のときに月額10万円以下でローンを組もうとすると、月々9.7万円の支払いで、2300万円の借り入れができます。

仮りに月額20万円以下の返済プランでローンを組もうと思えば、金利1%だと6000万円まで借りることが出来ますが、金利3%になると、4600万円までしか借りることが出来ません。

  年利 30年返済 月額返済
2018年 1% 6000万円 約19万円
202X年 3% 4600万円 約19.4万円

つまり、夫婦共働きの世帯で、月額20万円以下の支払いを目安に家を購入しようとした場合、2008年には4600万円までのローンしか組めなかった夫婦が、2018年には6000万円のローンが組めるようになっていた、ということになります。

これを逆の視点で考えてみると、2008年に6000万円の家を購入した人は、月々25.3万円を支払わなければなりませんが、2018年であれば、月々19万円で済んだ、ということになります。

  年利 借入30年 月額返済
2008年 3% 6000万円 約25.3万円
2018年 1% 6000万円 約19万円

金利が下がると住宅が売れるようになるというのは、金利と借り入れ額の間に、このような相関関係があるからなのです。

従って、変動金利で借りている場合には、金利の上昇とともに、返済額が急上昇しますので注意が必要です。

今後金利の上昇が予想される中、できるだけ固定金利に借り直していくということが重要かと思います。

夫婦の収入も変動要素

6000万円もする家なんて購入できない、と感じる方も多いかとは思いますが、東京の湾岸エリアの住宅であれば、6000万円前後の価格は一般的です。

家計に大きく占める費用は、住居費と教育費になりますが、どちらも未来への投資と考えた場合、支出に対してブレーキがかかりにくくなりがちです。

結婚してすぐに住宅を購入しようと思えば、おそらくまだ三十代でしょう。夫婦合わせて1000万円ほどの年収があっても、月々20万円の支払いは厳しいのではないかと思います。

子供ができれば、保育園へのお迎えも発生します。残業代も見込めなくなるでしょう。保育園が見つからなければ、仕事をやめなければならなくなるかもしれません。そうしたリスクも考えて、住宅ローンの支払い金額は決めたほうが良いでしょう。

住宅価格が上昇していく背景には、女性の社会進出で夫婦共働きが一般化し、ひとりひとりの収入は増えていなくても、結婚した共働き夫婦に限っては、世帯所得が増えている、ということがあると思われます。

支払えないのに完済年齢を80歳にまで伸ばした

昭和の時代、住宅ローンは定年までに完済することが当たり前と言われていました。

しかし、平成の時代になって以降、80歳までの支払いが一般的となっています。

月々支払える金額が決まっていれば、あとは支払い期間を伸ばすしかありません。

60歳までに支払うのではなく、それが80歳までということになれば、銀行は20年分の利子が儲かり、住宅メーカーは20年分の支払金額を住宅価格に上乗せできます。

建前としては、高くなりすぎて買えなくなった住宅を、少しでも手に入れやすくするために、月々の支払いを減らせるように、完済年齢を80歳にまで伸ばせるようにしました、ということでしょう。

しかし、人間の心理として、月々の支払い金額は、ぎりぎり支払える上限に近づくものです。いつの間にか住宅価格は上昇し、銀行は20年長く金利を得ることが出来るようになり、住宅メーカーも売上を伸ばすことが出来るようになりました。

60歳で住宅ローンの支払いが終わり、あとは年金で老後生活を送るという、昭和の時代の老後生活は今や遠い昔。住宅ローンは80歳まで、定年も70歳まで。死ぬまで働いて、80歳よりも前に亡くなる場合には、団体信用生命保険で、残された家族に家を残して上げましょう、というモデルが一般化されてしまいました。

富裕層は例外です。対象はローンで家を買う会社員です。正社員であることのホコリを胸に、働きづめの一生を送ることになりました。

銀行の畑に見えてくる家並み

そう考えると、見渡す限りの家並みが、どれもこれも銀行の耕す畑に見えてきます。

中には現金一括払いで購入した家もあるでしょう。しかし、ほとんどの家には銀行の設定した住宅ローンの抵当権が付いているはずです。

2022年に生産緑地の多くが指定解除を受け、宅地化されると言われています。

これは農家の持っていた農地が、銀行の耕す畑に置き換わるということなのかもしれません。

農地開放で地主から土地を得た人たちが、最後にまた大資本家である銀行に耕作地を提供する構図。そう重ねてみると、輪廻転生、万物は流転するものだとつくづく思います。

銀行へせっせと毎月金利を納めているわたしたちが解放されたければ、早く残金を返すこと。ローマ帝国時代の奴隷も、主人に対価を支払えば解放奴隷として、自由人になることが出来たそうです。

ローマ帝国の時代から、この世の仕組みは、実は何一つ変わっていないのかもしれません。

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