日産とルノーの関係から見える日本企業とフランス企業の違い
ルノーは国営企業
フランス企業で日本法人の代表を務めていた人がよくこぼしていたのが、国営企業であることの制約。フランスは社会党が政権を担っていた時代に企業の国有化が進んでおり、いろいろと国が口を挟んできたそう。ミッテラン大統領が引退して、シラク大統領になって以降は、また民営化の流れが強まったそうですが、ルノーの株式を今でも持っているところなど、あれから三十年近くが経っても、そうそうその体質は変わるものでもなさそうです。
グランゼコールのひとびと
フランスは大学の上に、グランゼコールという政治家や企業幹部の登竜門となっている学校があり、大企業の経営者は、その多くがグランゼコールの出身と言われています。ゴーンさんもグランゼコールの一つ、鉱山学校の出身。東京都知事であった舛添さんも、グランゼコールの一つ行政学院に留学していたとのこと。人の欲望をコントロールすることは、どんなに頭脳が優秀であっても、難しいということがよくわかります。
労働者と経営者が入り口から異なっていることは、フランス企業にいるとよくわかります。日本の大企業の場合には、実際には人によってルートが異なっていても、露骨にそれを従業員に見せることはありません。四十代になると、実は三十代の頃から、いや入社のときから道が分かれていたことに、あとから気づくわけですが、できるだけ人事部はそれとわからないようにします。また、実際その通りに必ずしも進むとは限らず、時の運がその行先を変えることはよくあります。
フランスのように入口から違っていると、本人もその自覚を持って仕事に取り組みます。働かないフランス人のイメージは、一般労働者のお話で、フランスでも経営幹部候補生は、ある程度の実績を出すまでは、日本のサラリーマンのようにがむしゃらに働きます。日本の場合、すでに入口が違っていても、努力をすれば報われると思い、必死によくわからないゴールに向かって、ほぼ全員で頑張るところがフランスとの違いでしょうか。
実際、どのような仕事でも、夢中になって取り組んでいられる間は、収入にかかわらず充実するもので、たのしさを感じることができます。でも、実は入口から違っていたことにうすうすは気づいていながらも、忙しさに流されて、五十代になってようやく目の前に突きつけられて諦める、というのが、最近の日本の状況でしょうか。
フランスのマクロン大統領も当然のように舛添さんと同じ、グランゼコールの行政学院を卒業しています。フランスは政府、大企業を問わず、グランゼコールの出身者が幹部に名を連ねています。関係者の口ぶりからは、日本の東大を卒業した人の関係性とは比較にならないほど密で特別なものを感じます。
フランスのエリートグランゼコールと日本のエリート検察官の戦い
日本の場合、国が日産の経営に口を挟むことなどまるで想像もつかないことですが、グランゼコール出身者同士のつながりを考えると、マクロンが本気でゴーンを救いに来るような気がしてなりません。
しかし、日本の検察もプライドがあるでしょうから、どこまで踏ん張れるのか。どのような形で政治的決着が図られるのか、個人的には興味深く見ています。
マスメディアの論調は、検察のリークを垂れ流すようなものが多く、日産がルノー傘下に入らないことを応援するような雰囲気が感じられますが、日産が下請け企業に日々強いている圧力を考えると、今回の騒動をディーラーや部品会社の社員の方たちは、案外面白おかしく、現在の日産幹部に対して批判的に見ている向きがあるような気がします。あなたたちも同罪だぞ。そうした無言のつぶやきがこれからさざなみのように広がっていくのではないでしょうか。