保険を契約するときに注意しなければいけないこと

同じ「保険」でもその中身はずいぶんとちがう

日本の保険会社は、長くどの保険会社で加入しても変わらない。そんな商品づくりをしてきました。どの会社の商品に加入しても同じ内容なので、選択するときに迷う必要がない。それが保険でした。

ところが、時代は変わり、今では保険会社によって、その商品の内容は様々です。同じ保険商品でも、細かいところまで約款をよく読まないと、補償内容が違うので注意が必要です。

生命保険は、損害保険に比べると、商品の作りがシンプルです。しかし、損害保険は様々な保険が組み合わされて出来ています。入社して日の浅い社員だと、よくわからないないままに説明をしてしまうかもしれません。

メーカーの製品は、形があるものなので内容が想像できます。しかし、保険のように形のない商品の場合、品質はその対応する人によって様々。同じ会社で契約しても、担当者によってサービスレベルが変わってきます。

保険会社は金融機関であり、サービス業ではない、という意見もあるでしょう。しかし、契約者はそのサービスも含めて、検討をしなければなりません。事前に調べておかないと、自分自身が困ることになります。

特に契約者として、気をつけなければならないのは、自己責任ということ。どの保険会社で契約しても、どのルートで誰から加入しても、内容が変わらなかったのは過去の話。いまでは全く同じ商品を探すことのほうが難しいくらいです。

契約するときには、保険会社の特徴、販売ルートの特性など、様々な角度から、確認が必要です。

日常使いは簡単お手軽なインターネットで

 購入する商品の品質が一定である場合、インターネットによる購入は手間がかからず便利です。それも繰り返し購入している商品、すでに信頼を寄せる商品の場合などは最適と言えます。

 信頼できるメーカーの製品であれば、どこで買っても品質に差が出ることは考えにくいでしょう。従って、有名メーカーの電化製品などの場合は、有名百貨店ではなく、安売り家電ショップ、ディスカウントストアなどで購入することが一般的です。

高級品は直営店。プロセスや保証も含めて購入する

一方、高額商品である場合には、それが信頼できる商品であっても、高級店での購入が望まれます。

高級ブランドのバッグなど、一つ百万円以上する商品であれば、製品の保証を得るためにも、高級ブランドの直営店で購入する方が安心出来ます。

直営店と同じものが、ディスカウントストアーで売られていた場合、その商品の信頼性が疑われかねません。高級ブランドの場合は、購入プロセスそのものが商品と言えます。

大切なお客様としての応対を受ける。ふかふかした絨毯の敷かれた高級なお店の出口まで案内され、深々とお辞儀をされて商品を渡される。この購入プロセス自体が価値を持つ、一連の儀式であると言えます。

他方、高級ブランドの偽物を購入する人々がいます。これらの人々は、そのブランドの根拠となっている品質ではなく、その結果、築き上げられたブランドの物語が手に入れば良い。無意識にもそう考えていると想定できます。

ブランドは優越感のもととなるもので、周囲から賞賛される根拠となるものです。表面的な評価がほしい人々は、そのブランドの物語を知り、その物語の読者として、読んだことの無いベストセラーについて、理解したふりをして、その偽ブランドを身に着けます。

目に見えない商品をどう買うか

保険の場合は、どう考えたら良いでしょう。保険は目に見えない商品です。基本的には、何かを失った人に、金銭で補うことを目的としています。保険は、困った出来事に対する対価として、お金を支払います。

保険会社に求められる最も重要なことは、何でしょう。それは、事故が発生したときに、確実に保険金を支払うことです。

保険料が流用されたり、倒産して失われると困ります。そのため、国により様々な制約条件が設定され、保険業を行う場合には、国の認可が必要です。

まず、十分な金融資本が必要です。必要にして十分な人員体制が必要です。そこで働く人たちは、高度な専門知識を持つ専門家です。従って、給与コストも高水準。

不正が発生しないように、金融庁は常に監視を行う必要があります。保険料として預かった資産が失われることの無いよう、安全な資産で保持しなければなりません。

このような、一定の条件を達成した上で業務を開始している保険会社ですが、それでもその内容は各社様々です。

ネット通販型か、来店型・対面募集型か

インターネットの普及とともに販売数を伸ばしてきたネット通販型保険会社は、旧来の保険会社よりはネットショップに近いかもしれません。

ネット上で保険を販売するサイトは多数存在します。物を買うようにクリックを積み重ねることで、保険の契約ができます。これは実に便利です。しかし、この商品には形がありません。契約内容について書かれた、保険契約が存在するだけです。

人は、その証券を発行した保険会社を信じて、保険料を支払います。金融庁が厳しい検査を行うことにより、その信用は担保されています。保険契約は、お金にも似た存在です。そして、わたしたちは、保険会社を信用して、その目に見えない契約にお金を払うのです。

保険金の支払いのときにわかるクオリティー

しかし、その商品の中身は様々。サービスのクオリティーは必ずしも一定とはなりません。

保険料は、定期的に保険会社に支払われていきます。保険は、その人が不幸な状況に置かれたときに、初めて役立ち喜ばれるものです。しかし、不幸は滅多なことでは発生しません。

従って、そのサービスの提供を受けることは稀です。発生しにくい不幸であればあるほど、発生したときに、そのサービスレベルに満足できなければ、その失望感は深いものになります。

何を信じるか。根拠のない噂までもがネットには漂っている

専門知識のない人が、保険の内容を完全に理解することは難しいですが、契約はできます。

契約をする場合には、契約内容を理解した、ということに同意して、契約を締結します。しかし、実際は様々です。

契約の内容を契約者に理解していただくことは重要ですが、複雑な商品である場合は理解していただくこと自体が難しい。よくわからないけれど、入っておかないと、いざという時に大変なことになる。

でも、大変なことって、どんなことなのでしょう?

保険は様々な商品の組み合わせ。

自動車保険などはその典型。

 ・事故相手に対する賠償責任保険。

 ・ケガの治療費のための傷害保険。

 ・車の修理費のための車両保険(動産保険)。

 ・弁護士費用のための費用保険。

それぞれの内容を理解してもらうためには、様々な工夫が必要となります。

道を歩いている知らない人をクルマではねたときには保険金が支払われるのに、自分の親を車ではねたときには出ない。この違いを理解して契約している人がどれくらいいるでしょう。それを理解しないと加入できないとすれば、保険に入るための試験を行わなければならなくなります。

 理解促進のためには、従来のテキスト中心の説明だけではなく、視覚的に理解できる工夫なども必要です。各社工夫を凝らしていますが、そのための書類が増えすぎて、かえって読まれなくなるという、困ったことさえ起きています。

保険会社は、工夫に工夫を重ねますが、それでも全ての契約者に内容を理解していただくのは、難しいのが実状です。

どこで契約しても同じ、ではない

保険選びは結婚に似ています。

結局、最後は一つの契約を選ぶ。それが保険です。

ネットや窓口で多数の商品を並べて比較しても、その違いがわからなければ、意味のある比較はできません。結局、ネット会社や販売員の方が勧める契約で加入することになります。

人気のある人が自分の相手にふさわしいとは限りません。実は裏の顔があって、表で見せている顔とは別の顔があった。そんなこともあるでしょう。

保険契約を行うときに、販売チャネルによって、それぞれどのような特徴があるのか。下記にまとめました。

保険契約時に意識すべきポイント

保険の特殊性

–       目に見えないサービスを提供している。

–       提供するサービス内容は金銭補償。

–       国の事業認可が必要。

–       公共性の高い事業であるため、保険金支払いのための準備金が非課税になっている。

–       提供できるサービスは細かく当局の規制を受けている。

–       基本的には各社横並びでサービスを提供している。

–       文面上のサービスは同じに見えても、各社の方針の違いなどによって、内容にもかなりのばらつきがある。

–       保険金の支払いを受けるまで、多くの人々はその違いに気付けない。

–       生命保険と損害保険では、商品性(求められるもの)が大きく異なる。

–       生命保険は長期的。堅実に運用し、必要な時に、確実に資産を次世代へ受け継ぐことを目的とする。

–       損害保険は短期的。緊急的に保険金支払いが必要となる場合が多いため、迅速な対応が期待される。    

同じ保険商品でサービスに違いが出るのはどのようなときか

–       大規模保険会社は、資金的に余裕があるため、無理な営業または支払いを行わなくて済む。一方、硬直的な組織になりがちで、サービス面で融通がきかない場合もある。

–       小規模保険会社は、大きな金額の保険金支払いが発生すると、経営方針全体に影響が出やすい。一方、組織の意思決定が早く、小回りのきいた素早い対応を受けられることがある。

–       短期的な利益を重視する場合には、経営状態によっては保険金の支払いが厳しくなる。

–       長期的な利益を重視する場合には、保険金支払いを他種目展開のための一手段と考えて対応できる。

–       他種目販売をしている場合、一契約者から複数商品の販売につなげることができるため、低コストで売上げ増加をはかることができる。

–       自動車事故の発生確率は、おおよそ10%前後。具体的な各社のサービス内容と品質は、事故が起きて初めてわかることが多い。

–       保険会社の経営規模、支払い体制、商品内容、各社の方針、企業理念などによって、支払い時の対応内容はさまざま。

販売チャネル別の特徴と違い

ネット加入と対面販売の特徴と違い

インターネットによる募集

-  営業員と会う必要がなく、電話、ウェブなどで契約手続きができるため、加入手続きが容易にできる。

-  不要なものまで契約する可能性が低い。ほしい契約だけ加入できる。

–       保険に関する知識がないと、加入した内容について理解しないまま手続きが完了する。

–       保険の知識の有無、理解にかかわらず、クリックしたことにより、書面に記載されたことは承諾したとみなされる。

–       加入したほうが良い特約、条件でも、知らないことによって、契約せず、結果的に事故発生後に困る場合がある。

-  対面販売と比べて、比較的保険料が安いと思われている。

–       比較サイトに並んでいる各社の商品は必ずしも同じ内容ではない

–       代理店手数料を代理店に支払う代わりに、多額の広告費がかけられている。

–       多額の広告費をメディアに支払うため、問題が生じても、メディアが保険会社を批判しにくい、可能性がある。

対面販売による募集

–       対面販売が主流の保険会社でも、大手保険会社は、一定量の広告費をメディアに支出している。

–       対面販売が主流の保険会社の広告は、商品案内よりも営業員のイメージアップをはかるリクルーティング対策の広告が主流。

–       説明を受ける必要があるが、内容を理解する機会にもなる。

–       問題が発生した場合に、代理店の説明責任が問われるため、保険会社側も顧客への対応が慎重になる。

来店型ショップと訪問型営業の特徴と違い

–       来店型ショップでの販売は、満足感が高い。契約の意思を持つ自発的な顧客のみを対象としている。

–       来店型ショップの保全については、保険会社任せが多い。

–       来店型ショップは、とくに自動車ディーラーのような保険関連製品販売店の場合、自動車保険加入の必要性、という明確なニーズがはっきりしている。

–       訪問型営業は、担当者が契約から保全、支払いまでを一貫して担当すると、顧客の満足度は高くなる。

–       訪問型営業は、顧客ニーズが明確でないと、押し売りになってしまう。

電話募集の特徴

–       インターネットに不安を感じる人が電話で確認をする。

–       ウェブ上に記載された説明だけでは商品内容が理解できないため電話をかける。

–       電話募集はネット募集と比較して、人件費、コールセンター運営費用などが数倍多くかかる。できるだけ減らしたい。

–       電話で説明できる内容にするため、わかりやすい商品、シンプルな商品に販売対象をしぼる必要がある。

–       契約者が高齢化すると、電話での説明を希望する人が増える。長電話が増える。コストが増加する。

–       商品購入に時間がかかる。

–       お店で購入する場合と同じように説明を聞くことはできるが、資料などを使用した説明を受けることができない。

自動車保険の保険金支払いに関するチャネル別の特徴

通販型保険会社(保険会社社員が直接対応)

-  事故のときに、契約者が保険会社の社員と直接対応する必要がある。

–       契約者に保険の知識があればよいが、保険の知識がない場合、何をどうすればよいかわからない。

–       保険会社は必ずしも契約者の味方ではない。

–       通販型保険会社の契約者は、数百万契約分の1の存在。

–       通販型保険会社の社員は、保険金支払い部門の一担当者でしかない。大量に担当する事故案件の一事案として取扱う。

–       保険会社社員の場合、契約者を失ったとしても、直接給与が減るということはない。

保険代理店経由の契約(保険代理業者従業員が対応)

–       保険代理店は契約者から代理店手数料を受け取るため、契約者が自社から離れない工夫をする。

-  小規模代理店の契約者は、数百契約分の一。小規模代理店は自営業者が多く、顧客一人一人の重要性が高く気を配る。

–       小規模代理店は契約が他社へ移ると、手数料が入らなくなるため、死活問題となり、必死になる。

–       保険代理店は、事故発生をサービス提供のチャンスと考え、契約者に対して最大限のサービスを心がけ、他種目販売につなげる。

–       乗合代理店にとって、保険会社は複数ある保険会社のうちの1社に過ぎない。

–       一社専属専業代理店の場合、販売できる商品は一社。保険会社の下請けではあるが運命共同体となる。

–       ディーラ代理店は、自社自動車販売のために、保険金支払いがうまく進むように積極的に保険会社とのコミュニケーションを取り持つ。


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自動車保険の選び方 車両保険には必ず入るべきわけがある