家を買うか借りるか。家を借りるとは、家主のローンを代わりに支払うこと
以前、保険会社でリスク管理を担当していました。リスク管理の観点で、家を借りるということを考えてみます。
買ったほうがトクか、借りたほうがトクかを考えるとき、この関係性を理解すると判断がしやすくなります。
目次
家主の代わりにローンを支払う
家を借りるとは、一言で言うと、「家主のローンを代わりに支払うこと」です。
ローンの借り手は家主です。
家主は銀行からお金を借りて、賃貸用マンションやアパートを建てます。
借り主は家主からその家を借りますが、そのお金の大部分はお金の貸し手である銀行に支払われます。
つまり、家を借りるときには、
- 家主のローン
- 家主の利益
- 家の維持費用
を、家主に代わり、借り主が支払っていると言えます。
家を買うとは家主兼借り主になるということ
家を買うと、所有者となる代わりに、これらの責務を負うことになります。
つまり家の家主であり、借り主である、というのが、住宅ローンを組んで買った家に住む場合の家主の立場となります。
家は買ったほうがよい、借りたほうがよい、など、さまざまな意見を耳にします。
家主の負うリスク、借り主の負うリスク、それぞれを考えてみると、それぞれの立場にメリットのあることがわかります。
リスクを家主に移す
家を借りた場合に、借り手が免除される一番大きなリスクは、不動産価値が変動するリスクです。
家主なら誰もが負う、損失を負うかもしれないリスクを、家主に負わせることが出来ます。
借り主自身は、そのリスクを引き受けなくてもよくなります。
一方で、不動産価値が上昇したときの利益も得られなくなります。
一般的にリスクとは、損失を意味することが多いのですが、金融機関でリスクと言う場合は、変動する可能性という意味で、リスクという言葉を使います。
つまり、金融機関の視点で見ると、リスクには、プラスのリスクとマイナスのリスクがあります。
- 変動リスク
- プラスのリスク → 不動産価格上昇による利益
- マイナスのリスク→ 不動産価格下降による損失
さらに、不動産の維持費が負荷されます。また、建物部分については、経年劣化によって徐々に価値が下がります。
また、天災、火災等による事故発生の損失も、借り主は負う必要がありません。
- 家主の負うマイナスのリスク
- 維持費負担
-
建物価値の低下
-
事故発生時の損失
家主に家賃を支払うことによって、借り主はそれらのリスクをすべて、家主に転嫁することが出来ます。
家主は利子を銀行に支払う
家主は銀行からお金を借りて不動産投資を行います。
借り主は家主に対して家賃を支払います。そして家主は、得た家賃の中から銀行に対して利子を支払います。
銀行は家主に対してお金を貸しますが、お金が返せなくなったときに備えて、担保を設定します。たいていの場合、融資対象の物件と、足りなければほかの不動産などの提供を求めます。
融資の条件はさまざまですが、銀行は損をしないように、担保の価値を越えないように貸付を行います。
家主は銀行への返済と、家主自身の取り分を考えて、家賃を設定します。
銀行への支払い、維持にかかる経費を差し引いて、手元に純粋に残る利益が、銀行の預金金利よりも大きくなければ、わざわざリスクを取って、不動産オーナーとなって家を人に貸す必要はありません。
不動産価格が高すぎるときは借りたほうがトク
たとえば、月額家賃21万円。年間で250万円ほどの家賃を支払うとします。
この部屋に20年住むと5000万円、30年住むと7500万円の家賃がかかります。これに加えて更新料などの経費がかかります。
家賃は支払うだけで、資産にならないと言いますが、リスク管理の観点で言えば、家を購入したときに負う、マイナスのリスクも負わなくてよい、というメリットも生まれます。
その家を購入して、20年後、30年後に、何が手元に残るのか。
家を購入すれば、それがマイナスの資産になる可能性も持つことになります。
購入しようとしている不動産の特徴、自分自身の状況、によって同じ物件に住む場合でも、そのメリットとデメリットが変わってきます。
老人になると家を貸してもらえない、ということも言われています。高齢化が進むことによって、そのような社会状況がどのように変わるか。
借りやすくなるのか、それとも借りにくい状況は変わらないのか。
損得だけではなく、社会がどのように変わるか、といった点も含めて、買うか、借りるかを、考えることが重要です。
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