AIの時代に必要な人材のタイプは、「解(答え)」よりも「問い」を出せる人

頭の良い人とは

情報機器を購入するときに気になるのは、記憶容量と処理速度。

どれだけ憶えることができるか。どれだけ早く処理できるか。

この二点で情報機器を選ぶことが多いと思います。

でも、実際に使ってみれば、同じようなスペックでも、使いやすい、使いにくいという違いが機器ごとに発生します。

偏差値の高い大学を卒業していても、できる人とできない人がいることと似ています。

記憶容量が多いと強かった

記憶容量が多いと、なんでも詰め込めるので便利です。撮った写真を都度サーバーに移したり、クラウドに移したりするのは面倒です。ネットで接続すれば自動的に移してくれるようにもなっていますが、容量は多いほうがやはり便利。

スマホを買うときに、64ギガにするか256ギガにするかなんて悩んでみても、一年使ってみて、結局の所30ギガ位しか使っていなくて、もったいないことをしたということはよくある話。

記憶力の優れた人は、見ただけで写真のように何でも記憶できるそうです。

教科書でも参考書でも、さっと見て、パシャパシャと写真のように頭の中に溜め込んで、テストのときにそれを思い出すそうですから、それができれば、今の学校のテストなどには、抜群の対応力を見せることが出来ます。

何度読んでも憶えられない私からすれば、一度見ただけで記憶できるなんて、羨ましい限りです。

処理速度が早いと便利だった

古いスマホを持ち出して久しぶりに使ってみれば、画面がカクカクして、スムースに画像が現れてこない。最新の現役機種であれば、一瞬で表示されるのに、少し時間がかかる。

それで何が困るかと言われても、実はそれほど困ることはありませんが、一瞬の遅れがあると、ストレスが溜まります。

テレビのバラエティー番組に出演する芸人さんは、この処理速度がものすごく早い人たち。

言葉の流れを汲み取って、次の言葉に瞬時につなげる反射神経が良くなければ、バラエティー番組で活躍することは出来ません。

そのような能力があまり無い私は、いつもすごいなあと、テレビの前で芸人さんたちの繰り広げるトークの切り返しに、ため息をついています。

クラウドサービスで記憶容量は補える

グーグルもアマゾンもアップルもストレージを無料もしくは安価に提供してくれるので、以前ほど端末自体に何でも貯め込むということはなくなりました。

でも、どこかのストレージサービスに情報を置いておくと、自分自身の人生がその一企業にすべて把握されているような気がしてきます。

それがあまりいい気分ではないからと言って、情報を分散させると、それはそれで面倒であったりします。

記憶容量を偏重する入学試験

英数国理社の知識を問う入試は、結局の所、記憶力と処理速度を確認する選抜方法。

情報機器がなかったり、クラウド上にデータが存在していない時代には、自分の脳の中に情報をいかに多く貯め込むことができるかが重要でした。

電卓があるのにそろばんを習ったり、計算問題を解くのは、頭の中にその思考回路を築くため。

しかし、いくつかの情報をもとにそれを横に広げていく思考の展開力は、記憶容量と処理速度だけではカバーしきれない能力です。

そして、その展開力を身につけるために、ネットのリテラシーはとても重要です。

基礎的な学力が身についていれば、スマホのような情報機器は、打ち出の小槌やドラえもんのポケットのように、あらゆる情報の窓口となり、できる子をより成長させるツールとなります。

いまだに履歴書を使う変われない人事部

最近はあまり学校歴が問われないとは言いながら、相変わらず履歴書などという、卒業した学校名や働いた会社名だけを並べた文書を書いて提出することが、日本の就職活動では必須となっています。

職務経歴書で十分と思いますが、ご丁寧にも手書きの履歴書を要求する組織まであります。

どの地域のどこの学校を卒業したかで、その人の育った環境は想像できるし、どのような会社へ入ったかで、その人の会社員としての歩みも想像できるとは思います。しかし、それは同質的な日本人だけの採用しか前提にない場合です。

これだけネット上に個人の活動の記録が晒されている時代に、相変わらず学歴と職歴だけの履歴書を入手して選考時に、いったいどのようにして使うのだろうと思います。

入社手続きで必要なのはわかります。でも、選考の段階で個人情報を集めすぎると、あとで処分が大変です。不要となった個人情報は、原則的に即消去しなければならないはずですが、日本中の人事部や採用部門のフォルダーやキャビネに、不要となった個人情報が悪気もなく大量に保管されていることでしょう。

だから新しいものが生み出せない

日本のメーカーの作るものは、いまあるものに、足し算で機能を付加していきます。

その結果、使われることのない機能だらけの製品が出来上がります。

電話に様々な機能を付加したものがガラケーです。

しかし、ガラケーの先にスマホはありません。

スマホの先は、AIスピーカーでしょうか。

全く違う次元への発想の飛躍がいまの日本企業からは生まれてきません。

明治の文明開化から続いてきた日本の近代化、工業化の過程では、西洋の物まねでなんとかなってきました。でもそんな時代もいよいよ終わりです。

トリセツがなければだめな日本製マニュアル文化

新しい製品を購入したとき、まずは取扱説明書を見る、というのが、かつての新製品購入時の常識でした。しかし、Iphoneには説明書が入っていません。

製品には取扱説明書がなければだめだろう、というのが日本企業で、これは人材選考時に履歴書がないとだめだろう、というはなしと根が同じ気がします。

スマホはダウンロードしておくアプリでその内容は全く違います。

スマホの説明書をつくろうにも、中に入れるアプリによって、できることが変わります。

日々予告なしにサービスも更新されていきます。

記憶容量と処理速度を想像することにしか役立たない履歴書をとりあえず出せという日本企業。器の大きさと形だけ見て、その使いみちを見るのに適さない履歴書文化。

I phoneには、電話と思い違えるような名前はついていますが、I phoneの実態は電話ではありません。私は電話を全く使いません。連絡に使うのはラインかメッセンジャー。

今ある位置からしか考えられない組織は、トリセツを作っている間に時代が変わり、置いてきぼりを食らいます。

AI時代に求められるのは問う力

これまで、「問い」は常に時代の先に見えていました。

それに対する「解」を得るためには、過去の知識とその情報を高速度で処理できるスーパーコンピューターのような人間が必要とされてきました。

しかし、これからは、人間の能力を超えるAIの時代です。

必要な人材は、AIへの「問い」が出せる人材です。

情報はクラウド上に数多く漂っています。

それを形ある有益な情報とするためには、AIの「解」を導く「問い」、すなわちインテリジェンスが必要です。

どのように問えば、欲しい情報をAIが提示してくれるのか。

「問い」を生み出すための知識は必要です。しかし、それらのすべてを頭の中に刻みつけておく必要はないのです。

要点を把握し、自学する方法さえわかっていればよいのです。

わからないことは、少し学習して、その都度「問い」を考える。

令和の時代に必要な人材は、そのような「問い」を考えられる人材だと思います。

問いによって導き出される答えは違うし、問いによって望む世界が定義されるのですから。