KLIA1空港から市内へ


   クアラルンプールの空港から市内まで電車で向かう。時間はおよそ三十分。電車はKLセントラル駅に到着する。KLとはクアラルンプールのことだ。

KLセントラル駅は、隣のクアラルンプール駅にかわり新しくできた駅だ。ここからモノレールや地下鉄に乗り換えて市内各方面へ向かう。

   クアラルンプールの交通機関の特徴は、乗り換えが不便であることだ。

   例えば、KLセントラル駅でモノレールに乗り換えようとすると、大きなビルを一つくぐり抜けていく必要がある。

東京のターミナル駅も、数多くの電車が乗り入れているのだが、乗り換えのことをよく考えて作られているので、わかりやすい。

   ところが、クアラルンプールの場合、乗り換えのことをあまり考えていないように感じる。

   市内交通の案内図を見ると、乗り換え駅のようにかいてあるので、日本のように乗り換えに時間がかからないだろうと思っていると、とんでもない。乗換駅と駅との移動だけで十五分ぐらいはすぐにたってしまう。

空港から市内まで三十分。セントラル駅からモノレールに乗り換えて十五分位で着くはずだったのが、結局一時間以上かかってしまった。モノレールに乗り換えるための時間が十分ほどと、駅で十分ほど待ったからだ。

モノレールの駅は屋外にあるので、当然のことながら暑い。それまで涼しい空港から冷房の効いた特急列車に乗って市内まで来たため、外気に触れる機会が全くなかった。

ところがモノレールの駅で初めて熱帯の空気を吸い込むことになった。

   大型の扇風機がホームで何台も回っている。ホームからの転落を防止する、ホームドアもあるのだが、列車が止まるところは、ドアが開いている。つまり油断していると、転落する。せっかくの転落防止ドアが開けっ放しになっているので、あまり意味がない。

車で移動する人が多いからだと思う。代わりに道路は常に混雑している。

 モノレール自体はよくあるモノレールで、エアコンが効いていて快適だ。

 人が大勢乗っているが、日本のラッシュ時のように、押して乗り込むというほどでもない。

 チョウキット駅から歩いてホテルへ向かう。ところが、この駅の周辺の歩道は、いたるところすべて露天商のテントで埋め尽くされている。

 駅の歩道を降りて歩こうにも歩けない。歩道の上に切れ目なくテントが張られており、その下ではありとあらゆる商品が並べられている。食べ物もあれば、バッグも靴下もある。中でもすぐに移動しやすい服類が多そうだ。

 露天商のテントが張れるくらいなので、歩道の幅は広い。でもそこは通路ではなく、お店となっているので、結局、歩道と道路に面したお店の隙間を縫うように進む。進むと言っても、障害物がやたらと多く、前を見ながら歩くとつまずいて転びそうだ。

 店ごとに段差があれば、階段状の段差を下りたり上ったり。そこに腰掛けている人がいれば。肩をとんとんとたたいて、横を通らせてもらう。たまに横になってうたた寝している人もいる。

 食べ物屋さんの前などは、スープの捨て汁か、水か、掃除をしたあとなのかわからないようなもので濡れている。スーツケースのタイヤが得体の知れないものにまみれるのは嫌なので、その間は、腕で持ち上げて運ぶ。

 ホテルはモノレールの駅から近いはずなのに、一向に見えてこない。

すごいところに宿をとってしまったなと、ちょっとため息混じりで横を見ると、ホテルの入口があった。

歩道のテントが大きすぎて、正面に来るまで肝心の建物の門構えがまるで見えなかった。

 ホテルの入口の前だけ、露天商のテントが張られていない。どうやら、バス停があるようだ。それにホテルの客を期待したタクシーも数台出てくる人を待っている。

 ようやく到着。一時間弱で到着する予定が、一時間半ほどかかった。

 移動に時間がかかる街で、効率的な都市ではない、ということのようだ。