ライフプラン表で考える教育費 三人兄弟の受験事情
目次
三大支出は、住居費用、教育費用、老後費用
私は三人のこどもの父親ですが、収入のほとんどが、住居費用と教育費用に消えていきます。これで老後費用なんてどうやって貯めるのですか、という状況です。
もしも住む家があり、こどもがいなければ、何にお金を使っていたのだろう、と考えるくらい、自分のことに、お金を使っていません。10年前に買ったユニクロの服はいまだに現役です。
しかし、それが今の時代にこどもを三人育てるということなのでしょう。
今年でようやくこどもたちの受験が終わります。
ファイナンシャルプランナーの立場で考えると、お金の話になりますが、お金は起きる難題の解決手段にすぎません
まずはこどもが三人いると、どのような人生をおくることになるのか、見てみましょう。
三人兄弟だと10年連続受験
下表は、わが家のライフイベント表「受験編」です。
私が42才のときにこどもの受験が始まりました。一年置いて次男の中学受験から今年の三男の大学受験まで、44才から53才までは、毎年十年間連続して何かしらの受験を繰り返してきました。こどもが三人いるということは、このような人生を送るということなのです。
私は、結婚前は海外旅行に飛び回り、こどもが生まれてからも、こどもをつれて、クルマで週末旅行を楽しんでいました。
三男が生まれるまでは、ホテルのツインベッドで、夫婦それぞれがこどもをひとりずつ腕の中に抱いて、家族四人一室で泊まりながら出かけていました。
しかし、三男が生まれてからは、家族五人で泊まれるところはほとんどなく、泊まろうと思えば費用がかさむので、旅行に出かけることはあきらめていました。
それでもどこかへ出かけたい私は、当時安くなり始めていた、苗場にリゾートマンションを買いました。旅行へは出かけられませんが、そこで家族五人の休日をたのしもうと考えたのです。
夏休みは避暑しながら、虫取りや山登り。川遊びもしました。冬休み、春休みはスキー三昧です。
毎年年末は、クリスマスの頃から年明け一週目の間、二週間ほどを苗場で過ごしました。そして、スキーシーズンの終わるゴールデンウィークまでは、繰り返し家族で何度もスキーに訪れました。
しかし、それも次男の中学受験が始まるとともに終了しました。その後の10年間、年末年始を苗場で過ごしたことはありません。スキーシーズンと、受験シーズンは完全に重なるのです。
教育費用を考える
こどもが生まれた段階で、このようになることは予測がついていました。そこで、直前の三十代の間に私は2つのことを考えました。住居費用と教育費用をどうするか。
当時、私は自営業者でした。教育費がかかるようになると、自営業者の不安定な収入では、計画が成り立たないと考えました。
そこで就職しました。複業をしながら、いくつかの仕事を経て、保険会社で落ち着き、10年連続して続く受験期の出費を乗り切りました。
乗り切れると思って就職したわけではありません。そうでもしないと続かないことが明白だったので、就職したのです。結果的に、まだ終わってはいませんが、あと少しのところまで、たどり着きました。
さて、この間、いったいいくらかかったのでしょう。
わが家は高校まで、三人とも少中高と公立でした。一番学費が安いパターンです。
受験の年だけ一人100万円かかると見込んで、表を作ってみました。実際には、三年生のときだけ塾に通うということはないので、三年通えば三倍かかります。
駿台予備校の月謝は月8万円。早稲田アカデミー(ワセアカ)は月7万円の月謝がかかりましたので、年間100万円という金額は多すぎるということはないと思います。駿台は週に三コマだけでしたし、ワセアカも、英数国三教科だけでした。フルコースで通えば、もっとかかります。
開成中学に進学した生徒さんの父兄にきいたところ、ひと月塾代10万円プラス家庭教師費用だそうです。従って、下記のケースは相当手を抜いた場合、の数字となります。
これは塾代だけで、このほかに学費がかかるということです。国公立の場合、学費は無料ですが、別途徴収される費用が数万から数十万円。私立であれば学費だけでさらに年間100万円前後かかります。
受験の年だけではなく、一年生から塾に通うとすれば、三人の塾費用だけで3300万円。それも10年続けて毎年300万円の出費です。月額25万円。
大企業で夫婦共働きでなければ、到底支払えない金額です。平均的な収入の家庭のこどもたちは、いったいどうすればよいのでしょう。
問題なのは幼稚園よりも大学の学費と奨学金という名の借金
政府は幼児教育の無償化を進めていますが、肝心なのはそこではないと思います。一番厳しいのは大学です。
幼稚園は義務教育ではありませんし、小学校も地元の学校へ通えば学費はかかりません。
しかし、一番問題なのは、高騰する大学の学費です。
私立文系で年120万。私立理系で年170万。
国立大学へいけば良いと簡単に言う人もいますが、東京の国立大学は、東大などの難関大学ばかりです。
東京の難関大学へ合格できるのは、小学生の頃から毎月10万円以上の塾代を支払うことが出来た家庭の出身者ばかり。塾へ通わずに合格する優秀な生徒も中にはいるのかもしれませんが、実際のところ、データを見てもほとんどが難関私立中高出身者ばかり。
塾代が払えなかった家庭のこどもたちは、最後の最後、大学受験のところで、もっとも学費の高い私立大学へ進学することになってしまうのです。小中高とお金をかけずになんとかしのいできたとしても、最後に六年分のツケが回ってくる、ということは皮肉なことです。
そんなわが家も例に漏れず、見事に全員国立大学へは入学できず、三人共私立理系。私立理系は一人年150万円以上かかります。早稲田大学の場合は年170万円以上。三人大学生がいれば学費だけで年間500万円以上。
奨学金という名の教育ローンを借りなければ、大学へも進学できません。おまけに住宅ローンが金利1%の時代に、保証料という名目で住宅ローンの数倍にも及ぶ利子を貸付前に差し引くのです。先日計算してみれば金利で5%以上。奨学金の保証くらい、国でできないのでしょうか。
日本の大学生の半数が、借金を背負って社会人になるのです。これでは車は買えないし、家も買えない。ますます消費は落ち込みます。借金があれば結婚もできません、少子化がますます進むことでしょう。少子化対策はまずは、奨学金対策からなのに、対策が見えてこない。
ちなみに、フランス人の上司にその話をしたら、フランスは学費無料だよ、とのこと。欧州の大学は、多くの国で学費が無料であったり、かかっても、数万円から数十万円です。なぜ日本でそれが出来ないのでしょうか。
収入のほとんどが教育費と住宅ローンで消えます。当時の上司と比べてみれば、同じところで働いていながら、その所得格差は天文学的な開きがあります。実質的な所得が先進各国と比べても、大変少ないことを、日本人は自覚したほうが良いと思います。
ライフプラン教育を進めるとこどもが産めなくなる
ライフプランを考える教育を文部科学省は進めるそうですが、このような実態を知った高校生たちは、一体どう思うのでしょう。こんなにお金がかかるのであれば、こどもなんてたくさん産めないと考えるでしょう。
現実を知れば知るほど、こどもを育てることは難しい。ましてや何人も産み育てるなんて、難しいことだと考えることでしょう。
こどもの数も、一人か二人まで、それ以上は無理、と考えることは必然で、実際、私のまわりにもそのような人は多くいます。みなさん頭の良い方ばかりです。
三人もこどもがいたら、生活できないでしょう、教育費はどうするの、などと、言われたりもしましたが、先のことまで考えていたら、何も出来ません。それでもこれまでは、なんとかやってきました。
そのために、クルマはあきらめましたし、旅行も行かなくなりました。服は十年前のユニクロを相変わらず着続けています。代わりに得たのは、三人のこどもたちの笑顔です。
親が近くにいなければ無理
なんとか回して来れたのは、親の協力があったからです。
こどもが三人いると、必ず一人余ります。こども一人に親が一人ついていくと、こどもが一人余ります。そんなときには、老親に預けます。
老親がいなければ、ローテーションはまわりません。核家族が一般的な世の中ではありますが、三世代が協力することは合理的な方法です。なので、地方から上京してきた人は、大変だと思います。
こどもの学校行事でも、三人ばらばらになってしまったときには、老親の出番です。私達夫婦の代わりに、孫を連れて参加してもらいます。
ベビーシッターという方法もあるようですが、老親にはかないません。他人に預けると気を使います。お金もかかります。
実の親なら安心です。孫のために、全力を尽くしてくれます。
二人までしか認めない行政の矛盾
どこかの児童施設で、親一人に付きこどもが二人までというルールが有るという記事を見ました。役人の手が足りないから、というのがその理由のようです。
しかし、親一人では手に余るから、児童施設に連れてきているのに、一番困っている、こどもの多い家庭の親を締め出して、どうするのでしょう。役人のために施設があるのではなく、その逆のはずです。出来ないなら対策をたてないと。締め出すなんて、本末転倒です。
自転車三人乗り禁止も同じです。理屈ではわかります。危ないこともわかります。
しかし、ならどうしろというのでしょう。
こどもが三人いたら、買い物にもいけません。親が近くにいて、手伝ってもらえなければ、こども三人は育てられないということになります。
行政サービスを考える役人は、仕事ばかりして、家で子育てをしないからわからないのでしょうか。
三人以上産まないと人口は減る
こどもを産むことを国が押し付けることは論外です。しかし、この厳然たる事実を日本に住む人は理解すべきです。
人が減れば消費が減り、経済も廃れていく。誰が考えてもわかることです。
まずは産んで育てやすい環境を作らないと。日本は消滅します。
なのに、児童館は一人で二人までしかダメ、だとか、行政の都合を優先して、親が近くにいないと三人以上育てられない環境を放置しているのはどうなんでしょう。
こどもの学費が高くて支払えない、ということがわかっていれば、産児制限もするでしょう。こどもの学費が無償であったなら、おそらく多くの友人達は、もっと産み育てたことでしょう。
こどもは社会が育てるものだ、という、ジャン・ジャック・ルソーの思想がフランスには根付いているのか、少子化対策で子ども手当を思い切って増額しました。そのおかげで、人口が増加しました。
政治家は三人以上産め、というのではなく、産み育てたくなるような環境を作らなければなりません。
フランスが成功しているのだから、日本も同じようなことをすればいいのです。
放置すれば国が消滅するのですから、まずはとにかく対策をとらなければならないと思いますが、なぜかこの国では沈みゆくままに放置されてしまう。
予算を言い訳にしない
先送りしてしまうのは、公務員の評価制度に問題があるのでしょう。住宅の老朽化による廃屋の処分の問題も、すべて同じ。先送りして、自分が担当のとき、面倒なことには手を付けない。そしてそれが通ってしまう。予算が減って人手が足りない。理由はいつも同じ。
中には、発想力に富んだ、アイディア豊富な方々がいるのはよく存じています。しかし、工夫をしても評価される仕組みがないので、結局アイディアレベルの話で終わってしまいます。
かつての中国は、全員が公務員で、何でも、「没有(メイヨー)」といって、仕事をしない人たちばかりだったのが、いまでは資本主義国以上のモーレツぶり。仕組みを変えれば変わるはずなのです。
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制度疲労をなんとかしないと、日本は消滅します。
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