マレーシアの現代アートをナショナルアートギャラリー・Balai Seni Negara で見た
その国の今を知る一つの方法として、美術館へ行く方法がある。
ヨーロッパなら、各国の首都にはその国の栄華を示す荘厳な美術館が首都の中心部に建てられている。
これがアジアとなると、少し変わってくる。
中国の場合には、さすがにアジアの大国であっただけに、過去から現在に至るまでの様々な美術品が残されている。
しかし、熱帯地方の各国について言えば、その気候の影響もあるとは思うが、過去を感じさせる美術品がほとんど残っていない。
逆に考えてみれば、それはこれからの未来を予感させるもので、または、熱帯地方には常に今しかない、ということを、指し示しているのかもしれないと感じる。
どのようなものでも、形あるものであれば、日々降る雨、降り注ぐ熱波。この水と太陽による攻撃を受ければ、崩れ去り土に帰るまでの時の流れは早い。
石でできた建造物があったとしても、それらはものの十年もすれば、ジャングルの蔦の中に取り込まれて、その原型がなんであったかわからないようになるに違いない。
過去の遺物をさがしてもなかなか見つけることは出来ないが、いま生まれているものであれば、現代アートを見ることで確認ができる。
クアラルンプールで美術館へ足を運んだ。
ちょうどそのタイミングで、現代アートの展示を行っていた。
土曜日だというのに、訪れる人がほとんど居ない。
展示のレベルは、六本木ヒルズにある森美術館と比べてみても遜色がない。
急速な経済発展による、自然破壊を憂いている作品を多く目にした。
クアラルンプール中心部でも、まだ緑が数多く残されていることを感じたが、以前に比べるとその割合は著しく減少しているのだろう。
その国の今を知りたければ、その国の美術館を見るのが一番だ。そして、その先にその国の未来も見えてくる。
これだけの素晴らしい作品が展示されているにもかかわらず、まだ当地の人々は、芸術に対する関心を持てるところにまで、生活水準が至っていない、という現実をそこで知ることが出来る。